Myself;Yourself

TVアニメ『Myself;Yourself』第1話より、八代菜々香さん。

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作品データ

TVアニメ『ゼロの使い魔F』(2012年)
http://www.zero-tsukaima.com/
第6話『波乱の露天風呂』
原作: ヤマグチノボル (MF文庫J刊)
監督: 岩崎良明
脚本: 國澤真理子
絵コンテ: 鈴木洋平
演出: 鈴木洋平
作画監督: 戸田麻衣、長谷川亨雄

概要

 現代日本の高校生・平賀才人は、異世界ハルケギニアに使い魔として召喚される。以後はずっと異世界のみで進行する剣と魔法のファンタジー。そのアニメ化4期目にして最終シリーズ。
 典型的なハーレムものでもあり、さすがにシリーズ4期目ともなると正ヒロインであるルイズと才人は正式に恋人同士になっている。それでも他のヒロイン達は遠慮なく才人に迫り、嫉妬したルイズに爆破されるというオチが繰り返される様式美。
 先の戦闘に対する恩賞でアンリエッタ女王から領地を貰った才人は、名実ともに貴族となって自領へ。前領主の館に移り住むも、地下の隠し部屋を発見、その部屋の姿見が城の国王の寝室の鏡と魔法で繋がっていて(!)アンリエッタ女王と密会する形になります。
 そんなアホな! とツッコミたくなるところですが、この館はもともと妾宅で、先々代の国王であるアンリエッタの祖父が愛人を住まわせ、密会するのに使っていたのだろう、というリアルな話が出てきます。「厳格な王だった祖父にこんな一面があったなんて……」とアンリエッタはむしろ同情的。父親の愛人発覚ならショックかもしれませんが祖父だとまた少し違うということでしょうか。そして祖父同様、自分も不本意な結婚を強いられそうだという話に。「結婚するなとは言って下さらないのですね……」とこぼす女王。重いです! そしてごく自然な流れで才人とキス。しかもルイズにバッチリ目撃されている。
 私見ですが、アンリエッタ女王の迫り方は他のヒロインが才人にちょっかい出すのとは全く違う。重い女。しかもガチの浮気。アンリエッタだけはガチ。必ずしも最終シリーズだからというわけではなく、前もこんなでした。才人も完全に釣り込まれてるし、これはルイズと破局しても仕方ないレベル。ちなみにルイズとアンリエッタは幼馴染みの親友でもあります。
 さらに言えば、一応表向きは偶然ということになっているけど、才人にこの領地を与えたのはアンリエッタなわけだし、隠し部屋で密会するところまで全て計算なのではないか? としか思えない節もある。シエスタも女王が才人付きを命じたメイドらしいので、ルイズとの仲を妨害するための工作ではないのか? 「ときどきでいいのです、こうして会っていただければ」「では、またここで」とか言うてるし。
 すっかり前置きが長くなりましたがここまでが第5話で、第6話はサブタイトルからも分かる通りいわゆる温泉回(笑。ちなみにルイズと才人は一応仲直りしてます。それもなぜかルイズが悩んだ末に才人を許すという流れで描かれて才人はリアクションするだけ。どうも才人の言動は一本調子で、自分のやってることの意味がわかってるのか? と言いたくなる。再び閑話休題。ともかく、ルイズによって封印された隠し部屋との通路を確認しに、何食わぬ顔で訪れるアンリエッタ女王。不審者としてルイズに発見され、裸の付き合いとばかり露天風呂でサシで話をつけることになります。

評価

衝撃度 (Impact): 60

 状況は完全なド修羅場、しかも今まで友人とはいえ主従という節度は終始守ってきたルイズが「このあばずれ!」と叫んで女王陛下にビンタする。どう考えても第一級の衝撃シーンのはずなんですが、実際はどうも迫力に欠ける。しらばっくれるアンリエッタに何もかも知っているぞと詰問するルイズ、開き直る女王、という流れは間違ってないんですが、巨乳VS貧乳という構図になるところからコメディ調になってしまって台無しに。

表現力 (Expression): 65

 振りかぶるところまでルイズの正面から、ヒットの瞬間までを横から、その直後をアンリエッタ正面からのカット。オーソドックスですが大きなアクションが丁寧に描かれています。やや音の迫力とスピード感に欠けるのはルイズの身体能力ゆえか。そこをリアルに描いてもという気はするが(笑。

感情度 (Emotion): 75

 「本気で好きになってしまったから仕方ない」「同じ人を好きになるなんてよくあること」「悪いことはしてませんから!」と全く悪びれず開き直るばかりか、「少しは成長することね」と胸の大きさの差を嘲るアンリエッタ。これはルイズの怒りももっともだ、と言いたいところなのだが、やはり流れが色気に行ってしまったところでルイズの気勢も削がれてしまい、感情のクライマックスとビンタのタイミングがうまく合っていない印象です。

リアクション (Reaction): 60

 よろめいて頬を押さえるも、即座に「やったわねぇ!?」と反撃に移る。女王ナイスガッツです。しかし振り上げた腕を受け止められそのまま掴み合いに移行。惜しむらくはビンタを返してほしかった。ルイズもそこは様式として一発もらうべき。

破局度 (Catastrophe): 40

 結局「子供の時以来」の取っ組み合いで、ここからは完全に、両者力尽きるまでケンカして仲直りというお約束の流れに持って行こうとするのだが、問題が全く何も解決していないのは言うまでもない。アンリエッタは「このご時世、男はいつ戦争で死んでもおかしくない」だから自分に嘘は吐きたくない、とまた微妙に違う話を持ち出してルイズを丸め込みます(笑。 二人は握手して仲直り。それでいいのかルイズ。

『THE IDOLM@STER』 第16話 ハム蔵

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作品データ

TVアニメ『THE IDOLM@STER』(2011年)
http://www.idolmaster-anime.jp/
第16話『ひとりぼっちの気持ち』
監督: 錦織敦史
脚本: 白根秀樹
絵コンテ: 望月智充
演出: 小竹歩
作画監督: 常盤健太郎、飯飼一幸

概要

 アイドル育成ゲームのアニメ化。
 小ネタですが、擬人化されていない「小動物のビンタ」は他に例がない(笑)と思われるのでサンプルとして。
 TVの動物番組にレポーターとして出演しているアイドル、我那覇響。自分の飼い犬である「いぬ美」と一緒にレギュラー出演していたが、ある日いぬ美とケンカして一人で収録へ。ところがライバルの961プロダクションの陰謀により、収録現場から遠く離れた山道に置き去りにされ崖下に転落。電話もなく連絡もできない。そこでハムスターのハム蔵がいぬ美に助けを求めることを提案するが、ケンカ中だからと意地になった響は拒否。そんな響の肩に上ってビンタを見舞ったハム蔵は涙を浮かべて響を睨み、単身いぬ美を呼びに崖上へ走るのだった。
 擬人化されていないと書きましたが、ハム蔵は(動物と会話できる響と関係なく)完全に独立した人格を持ったキャラクターとして演技しています(笑。
 ちなみにハム蔵の声を演じるのは春香役の中村繪里子。

評価

衝撃度 (Impact): 70

 会話の流れ的には自然だが、まさかハムスターがビンタするとは思うまい(笑。
 しかも、ハム蔵が走り出すところで挿入歌が流れ、しかも雨が降り出すというドラマチックすぎる展開。

表現力 (Expression): 70

 左肩に乗ったハム蔵へ顔を向けようとしたところにカウンター気味に入り、ヒットの瞬間に響が目を瞑っているなど、芸の細かい演出。ハム蔵もハムスターの体型で全身を使ったアクションを見せる。
 ただ、頬を叩く音のタイミングが画と全く合ってないのは残念。ディレイまでかけてるのに(笑。

感情度 (Emotion): 75

 「キーッ!」というような鳴き声を発しているが、翻訳するならさしずめ「響のバカ!!」といったところだろうか。目に涙を浮かべて響を睨み、走り去るアクションで涙が飛び散るという、実にエモーショナルな演出。

リアクション (Reaction): 60

 頬に赤い跡が残り見た目はそれなりに痛そうだが、苦痛の表情はほとんど見せない。唖然としているうちにハム蔵は走り去り、雨の中、一人反省することになる。

破局度 (Catastrophe): 30

 この後ハム蔵とサシのやりとりはないが、迎えに来たペット全員に響が謝って和解。ハム蔵を肩に乗せて現場に駆けつける。
 余談だがここではハム蔵は響の右肩に乗ってるので、右と左で何か意味を持たせているのかと思ったが、意外と肩に乗るシーンはあまりないようで(OPとEDにはない)確認できなかった。

『花咲くいろは』 第1話 四十万スイ

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作品データ

TVアニメ『花咲くいろは』(2011年)
http://www.hanasakuiroha.jp/
第1話 『十六歳、春、まだつぼみ』
監督: 安藤真裕
脚本: 岡田麿里
絵コンテ: 安藤真裕
演出: 安藤真裕
作画監督: 関口可奈味

概要

 東京の女子高生・緒花は突然、祖母の経営する金沢の老舗旅館で住み込みの仲居として働くことになる。という話。
 同じく住み込みで板前修業中の民子と相部屋になるが、彼女の植えた食用のノビルを雑草と間違えて抜く、厨房の指導に口出しするなど善意の行動が裏目に出た形で民子にすっかり嫌われる。
 それでも短い睡眠時間で修行に精を出す民子に、緒花は少しでも疲れが取れるようにと気を利かせて陽の当たる窓に布団を干すが、下の階のお客に布団を落としてしまいまたも裏目。事情を聞いた女将は民子を呼び出し、彼女の身の回りの不始末が原因だとしてビンタ。
 悪いのは自分なのに理不尽だと食ってかかる緒花に女将は、お客にとっては理不尽どころではないと諭す。反省する緒花だが、「あたしも叩いて下さい!」とリクエスト。自分のせいで頑張ってる人が叩かれるなんて嫌だという言い分に、女将は無言でビンタ三発をくれるのでした。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 民子を目の前に呼んだ女将は、無言で煙管の灰を落として、静かに置き、目線を切ったままバックハンドでビンタ。かなりの高等技術である。その瞬間まで予測不可能という意味では衝撃度は高い。
 今のご時世ほとんど見られなくなった(?)、体罰としてのビンタ。厨房での言葉がすぎる説教といい、この旅館では昔ながらの厳しい指導方針が残っていて、東京育ちの緒花と文化衝突を起こすわけです。とはいえ本編で女将のビンタが飛ぶのはここだけ。民子に隙があったのは事実として、むしろ緒花への一拶の意味と捉えるべきかも。ただ仲居頭の巴のリアクションはそれほど驚いているようではないし、後に若旦那の縁が崇子に手を上げようとした時も「手が早いのは血筋か」と述懐しているので、女将ビンタは必ずしも珍しくはないのかもしれない。閑話休題。
 さらに緒花が自らビンタを要求するという意外な展開に、また無言で三発というのも凄い。お婆ちゃんのビンタという意味でもレアでしょう。ちなみに女将は68歳。

表現力 (Expression): 80

 煙管を置く所作からワンカットで次の瞬間手が飛ぶ様はまさに静から動。目線を向けないままの高等技術で、上体を吹っ飛ばし頬に跡が残る威力も十分。
 緒花へのビンタは二人とも立った状態で、緒花の言葉に一瞬、目を伏せて考えるそぶりを見せてから、おそらく振り向きざまに、間を取って三発。女将の袖が翻るのを、あえて激しくブレるカメラワークで一迅の風のような効果をつけ、その瞬間は見せずに緒花のよろめく足、揺れる後ろ髪のカットでつないで音で表現。こちらは両頬が腫れ上がるほどのダメージ。ちなみに鼻血を出しているのは「興奮すると鼻血が出やすい体質」という伏線が入っており、精神的な原因と考えられる。あくまで打撃は綺麗に頬に入った、と。
 二度にわたる衝撃の瞬間をうまく描き分け、画も工夫された良シーン。

感情度 (Emotion): 55

 女将はあくまで感情を交えず、民子に対する業務上の指導の一環としてビンタ。その後の緒花へのビンタは、本人の希望によるものであり、三発という数も含めて何らかの思いを込めたとも想像できます。

リアクション (Reaction): 75

 民子の、正座から脚を横に崩し頬を押さえて項垂れる様子はまさに「耐える女」の図で、「すみません」とひたすら反省の意。
 緒花は自分で言い出した手前もあり、目を潤ませながらも「ありがとうございましたぁっ!」と意地を見せる。
 これも好対照です。

破局度 (Catastrophe): 50

 民子は、女将の処置そのものには完全に納得しておりそこは問題なし。緒花は、女将の言葉に感じるところはあったものの、やはり意見の違いはある、という両者の関係がここで決まる。緒花の要求通りビンタした女将も、意外とガッツのある孫、と評価を改めた面もあるのではないか。この時点ではわからないが、母として娘として二人の間に入る皐月の存在も併せて考えると趣深い。
 むしろこのあと民子と緒花の間がますますこじれるのだが、それは別問題であり対象外。

島本和彦 『無謀キャプテン 2』 彩子

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作品データ

島本和彦 『無謀キャプテン 2』(1993年)
第2話『失い続ける男』

 

概要

 『逆境ナイン』に続く(舞台は同じ全力学園)「男の道三部作・第二弾」として登場した作品。主人公は“自らの意志で墓穴を掘る男”堀田戊傑(ほった・ぼけつ)。第1部が柔道編で、この第2部は宇宙人の侵略に対して超能力で戦うというダイナミックにもほどがある展開になる(笑。
 第1部のラストで、柔道部の助っ人として救援に失敗した責任が主人公の堀田一人に全て押しつけられ、学校での評判がどん底に落ちた状態で第2部は始まる。
 襲ってきた宇宙人を倒すと(唐突だがそうとしか言いようがないw)、その体内から意識を失った女子生徒が吐き出される。堀田の親友・人造人間ムウは彼女を敵とみなすが、堀田は彼女を庇って、二人は対立する。親友をも失った堀田に、舎弟(?)の突破孔は「堀田さんは損なクジばかりひいている」「何もかも失ってバカにされてくやしくないんですか」と叫ぶが堀田は無言。というところで問題のシーン。
 目を覚ました女生徒は、宇宙人に取り込まれていた間の記憶がなく、評判の悪い堀田が自分にいかがわしい真似をしたと誤解し、取り乱して釈明も聞かずに強烈なビンタを見舞って走り去る。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 評判は地に落ち、学校中から後ろ指を指され、仲間を失い、新しくできた親友とも訣別し、それでも守り抜いた女子生徒。なんと彼女にまで誤解され罵倒されビンタされる。まさに堀田が全てを失った瞬間である。
 ちなみに彼女・彩子は後半でヒロインとして再登場するが、この時点では名も知らぬ初対面の女生徒。

表現力 (Expression): 80

 予備動作なしの一コマだが威力、スピード感ともに文句なしのビンタ。
 よく見ると堀田は血ヘドを吐いているし(笑)、頬には見事な手形が。
 また「けだものっ!!!」というのも、なかなかお目にかかれないセリフである。
 効果音はどうやら「バヂビンッ!!」と判読できる。当時の作品テンションを物語る異常な描き文字擬音の一つ。
 その直後の二コマの間、これも絶妙だ。

感情度 (Emotion): 85

 驚き、不審、疑惑と確信、悲しみ、怒り全ての感情が一連のアクションの中に表れる。
 それら感情のソースは全て誤解なのではあるが。

リアクション (Reaction): 95

 虚を突かれたのも一瞬、怒り泣き叫ぶ彼女に堀田もパニックするが、走り去る彼女に今は何を言っても無駄、と悟ると――ここからが素晴らしい。雨上がりの虹をバックにたっぷりと間を取ってから、「ようし ラーメンでも食って帰るかあ突破っ!!」
 全て振り切って学校帰りのラーメン屋で物凄い勢いで麺を啜る。「うまい!!」というその顔に、汗とそして涙が流れるのだった。
 余談だがビンタの後は男同士でラーメン、という流れは『イリヤの空、UFOの夏』とも通じているのが興味深い。

破局度 (Catastrophe): 75

 初対面で、助けた相手から、絶交クラスの拒否反応を叩きつけられる。まさしく破滅的。
 次に会った時は、ムーを介して事情が通じ、もう誤解が解けていて堀田は彩子の謝罪を受け入れて和解が成立。それもかなり後になってのことなので、すでにほとぼりが冷めていた感もある。

『フラクタル』 EPISODE 04 フリュネ

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作品データ

TVアニメ『フラクタル』(2011年)
http://fractale-anime.com/
EPISODE 04 『出発』
監督: 山本寛
脚本: 岡田麿里
絵コンテ: 足立慎吾
演出: 足立慎吾
作画監督: 林勇雄

概要

 ユビキタスに構築されたフラクタルシステムが社会を完全に管理する未来世界を描く、一種のディストピアSF。
 フラクタルに反抗するグラニッツ一家に拉致されたヒロイン、フリュネ。彼らと行動を共にしていた主人公クレインは、監禁されていたフリュネを連れて脱走しようとするが、なぜか助け出した彼女にビンタされる。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 監禁された船倉に忍び込んできたクレインにフリュネは驚くが、一緒について来たネッサを見て険しい表情に。自分を縛った縄を解くクレインとネッサを見る冷たい目が早くも不穏な気配を感じさせる。
 縄が解かれると、座った姿勢から膝立ちに起き上がっていきなりビンタ。「よけいなことを!」
 よけいなこと、とはネッサをデータから再起動(?)したこと。自分が助けられたことはいわば当然で、礼を言うというような発想はない。もちろんクレインにはそんなことはわからない。次のやりとり、フリュネが残したデータを調べたというクレインに「勝手に調べた!? なんて下劣な品性なのでしょう!」というのも、両者のいわば社会的な価値観が全く食い違っていることを示している。厳密にはビンタとは別件ですが「下劣な品性」と罵倒されるというのもポイント高いです(笑。
 それから、ビンタの直後、クレインよりも早くリアクションするのがネッサです。もともと人の好悪の感情に敏感な彼女が、嫌悪感の最も強烈な表現であるビンタを目の当たりにして「あぁっ!?」と素で驚く様が新鮮。これも衝撃度ボーナス値は高めにつきました。

表現力 (Expression): 75

 上半身を大きく使って美しい軌道を描くフルスイングのビンタです。
 お互い膝を着いた体勢なのでアクションのダイナミズムには欠けるはずですが、そこを構図の取り方で巧くカバーしている点も含め見事な演出。

感情度 (Emotion): 55

 クレインの「よけいなこと」、つまり勝手に彼女の持ち物からネッサを目覚めさせたことを咎める、ペナルティを与えるようなニュアンスが強く、必ずしも感情が先行して手が出たわけではない、ようにも見える。

リアクション (Reaction): 60

 いきなり打撃がくるとは夢想だにしていないクレインは咄嗟に何も反応できない。「よけいなことを!」という不条理な言い分に「えぇ?」と力なく後ろによろめく画もいい。それから比較的冷静に反論を述べるも、さらに理不尽な糾弾にキレそうになったところで、先に取り乱したネッサが彼女に食ってかかる。さらにスンダも乱入してグダグダになって終了しているのは残念。

破局度 (Catastrophe): 30

 脱走してからはアクションに次ぐアクションで息つく間もないが、結局グラニッツの船に戻った後、最初に顔を合わせるのがハッキリと和解のシーン。というよりデレに近い。後腐れナシです。

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作品データ

TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)
http://www.starchild.co.jp/special/evangelion/neon-genesis.html
第伍話『レイ、心のむこうに』
監督: 庵野秀明
脚本: 薩川昭夫、庵野秀明
絵コンテ: 甚目喜一
演出: 杉山慶一
作画監督: 鈴木俊二

概要

 言わずと知れた大ヒット作。さすがに押さえておくべきかと思い取り急ぎフォローしました。TV版より。
 サブタイトル通り綾波レイにスポットが当たる回で、主人公・シンジと、彼の父親である碇司令を挟んだ関係を通してそのキャラクターが描かれる。
 セキュリティパスの更新カードを渡すために綾波の部屋を訪ねたシンジは風呂上がりの彼女の全裸を目撃、さらに押し倒して胸を掴むというアクシデント(笑。
 その後、基地に向かう途中の雑談で話題が碇司令に及び、自分の父親が信じられないというシンジに綾波は鮮やかなビンタを決めるのだった。

評価

衝撃度 (Impact): 70

 綾波は全裸を見られても押し倒されてもリアクションなしで、ただシンジが碇司令の眼鏡をいじっていたことに反応してそれを取り返す。その後「ごめん」と謝るシンジにも「何が?」と無頓着。その綾波が、碇司令の仕事を信じられないと言うシンジの言葉には過剰に反応してビンタ。
 彼女にとって何が大事で何がそうでないのか、出来事に対する反応を通してその価値観を描いているエピソードなのでこの流れは必然。しかし一方、あくまでビンタを軸にして観ると、その直前の全裸を押し倒すシーンのインパクトが強すぎてビンタが霞んでしまっているのは確かである。普通のアニメなら裸を見てしまってビンタとなるところなのだが(笑。
 とはいえ綾波がこんな険しい表情で怒りを露わにするのは全編でこのシーンのみであり、瞬間的なインパクト、そして長い目で見たレアリティを考慮してこの評価。

表現力 (Expression): 85

 シンジの言葉に反応して振り向き、エスカレータを一段昇って間合いを詰め、一瞬じっと睨み、シンジが何か言いかけたところにビンタ。シンジの肩越しの視点で肩までしか見えていないが、右手を上げた時に上半身が右に揺れ、ちゃんと全身を使って叩いているのがわかる。さすがに美しい動作。直後に切り返した構図で十分に時間を取っており、前後の間も完璧だ。

感情度 (Emotion): 75

 評価は難しいが、綾波レイ最大の感情表現ということでこれくらいの点はつけるしかないか。

リアクション (Reaction): 55

 反応できず固まったまま数秒。綾波が去ってから頬を押さえる。ごくオーソドックスなリアクションです。

破局度 (Catastrophe): 40

 二人が次に顔を合わせるのは、出撃したシンジが意識を失って収容され、目覚めた直後の病室。事務的に作戦スケジュールを伝達する綾波だが、「寝ぼけてその格好で来ないでね」とツッコミを入れる。この時ビンタのことは完全に頭から飛んでいる様子のシンジだが、どちらかというと綾波のほうが気を遣っている、ように見えなくもない。出撃前の会話も平常で、そして「笑えばいいと思うよ」というかの名シーンで和解がなる。
 成り行きとはいえ結果的にビンタは後を引かなかったといえる。

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作品データ

TVアニメ『インフィニット・ストラトス』(2011年)
http://www.tbs.co.jp/anime/is/
第11話『ゲット・レディ』
原作: 弓弦イズル
監督: 菊地康仁
脚本: 冨岡淳広
絵コンテ: 菊地康仁
演出: 米田和博
作画監督: 皆川一徳

概要

 作品としては、特殊な機体を扱う空軍士官学校ものといったところ。
 受領したばかりの自分専用機で初めて実戦に出撃した箒は、冷静さを欠いて判断を誤り作戦は失敗、彼女を庇った主人公の一夏は重傷を負って意識不明になる。
 夕暮れの浜辺に一人たたずみ、一夏との想い出を回想する箒の前に、同級のライバルの一人、鈴音が現れ、彼女を挑発するが、まだ弱音を吐く箒の胸ぐらを掴んで頬を張り、再起を促すのだった。

評価

衝撃度 (Impact): 60

 実のところ、初めて観た時に問題のシーンが始まった時点で直感的に「ビンタがくるぞ」という予感がした。ある種の黄金パターンに入っているためだろう。
 このエピソードでスポットが当たるのはメインヒロインの箒であり、一夏が意識を失った後は完全に彼女の視点で展開する。目を覚まさない一夏の枕元につきっきりで正座していた箒は、休むようにとの教官の指示で病室を離れ、何かを振り切るように浜辺を全力疾走。長い回想に入る。
 出撃前は、彼女が初の自分専用機に浮かれている様子を周りが危惧する描写がある。実際に作戦が失敗した要因は、犯罪者である密漁船を流れ弾から護ろうとした一夏との判断の食い違い。回想シーンは、幼馴染みである一夏と下の名前で呼び合うようになったきっかけの出来事。と、一つ一つの要素はうまく噛み合っていない感もある。
 ともかく自分のミスで一夏に重傷を負わせた、そのことを悔やむ箒の前に現れた鈴音は、IS乗りとしてのライバルであると同時に一夏をめぐる恋敵でもある。だが、ここでは「夕陽に染まる浜辺」という強烈なシチュエーションからして、恋敵ではなく同じIS乗りとして発破をかけに来たのだなと判断できるため、そのいわばスポ根の文脈でビンタが予想できたということだと思う。
 余談だが夕暮れの浜辺というシチュエーションは、この回の冒頭、同じ場所から出撃するシーンで午前の日差しが射しているのと対照にもなっている。

表現力 (Expression): 70

 右手で箒の胸ぐらを掴み、左手を振り上げるところまでを正面から。箒の言葉に感情が激する表情を捉えているのはポイントが高い。しかしショットが切り替わった瞬間もうヒットしていて、そこまでのスイングが省略された形になっているのは残念。またヒットの後のフォロースルーも、肩が下がり肘も曲がって力が抜けているように見える。腕を伸ばして振り切ってほしかった。全体としても、襟を掴んで固定している右腕と交差させるように振っているのでやや窮屈そうな印象を受ける。

感情度 (Emotion): 75

 上記の通り、鈴音と箒はIS乗りとして同期のライバルでもあり、一夏をめぐっては恋敵でもある関係。
 ここではまず「あのさぁ、一夏がこうなったのって、あんたのせいなんでしょ!」と、責める調子ではないがあえて容赦なく事実を指摘する。反応がないと見て今度は嘲る調子で「で、“落ち込んでます”ってポーズ?」と、不意に激して「ざけんじゃないわよぉ!」と胸ぐらを掴んで向き直らせる。今戦わなくてどうする、という言葉にも、死んだ目で「もうISは使わない」と漏らす箒に、遂に手を上げる。
 鈴音の一連の言動は全て箒を再奮起させるためで、一夏に重傷を負わせたことについて「あんたのせいで一夏は!」というように責める気持ちは一切見せていない。それは態度として見事ではあるが、少しだけその感情が滲む演出があってもよかった気はする。
 箒の反応を見極めようと睨む目が少し潤んでいるように見え、また箒の泣き言を聞いて激昂する瞬間の感情の動き、この二点の表現は巧い。

リアクション (Reaction): 75

 胸ぐらを掴まれた体勢から突き放すように叩かれ、倒れる箒。這いつくばった彼女をなおも罵倒する鈴音に対し、拳を握り、「――戦えるなら、私だって戦う!」と遂に顔を上げて叫ぶ。
 ここも完全に青春スポ根もののコードで、非常に美しい流れ。

破局度 (Catastrophe): 0

 「やっとやる気になった」箒に鈴音は笑顔を見せ、見守っていたチームの面々も含め「みんな気持ちは一つ」に。わだかまりがなくなり絆は深まった。くどいようだが、青春スポ根である。

定金伸治先生による「誤解ビンタ」理論

 定金伸治先生といえばデビュー作『ジハード』ではジャンプノベルというレーベルでもおそらく唯一、文字通り「ジャンプのノリの小説」を体現していた第一人者です。その方がこちらの方面にも見識をお持ちとは思いませんでした。
 公式サイトの日記より引用させていただきます。
事故チュウには知名度で一歩ゆずるものの、誤解ビンタというのも実によろしいですな。
少年たる者の人生、一度ぐらいは巡り会いたいものだ。
事故チュウの第一人者であるぼくも、さすがにまだ実物に出会ったことがない幻の大技。
ちなみに誤解ビンタというのは、何らかの誤解により、
「○○君のバカっ!」
とビンタされる現象のことである。
事故チュウとは違って、人間の意志の介在が必要になってくる高度な技なのであった。
人との関わりを断って生きる隠者が会得するのはなかなか難しい。

誤解の種類は様々あるけれども、やはり定番は他の女の子パターンですな。
他の女の子と話してたら誤解されてビンタ。
実によろしい……。
あるいは、ずっと頑張ってた目標の実現が目の前という時に道ばたで倒れている妊婦を病院に連れて行ったせいで努力がすべて水の泡になってしまうんだけどずっと応援してくれてた女の子はそんな事情を知らずサボって失敗したと誤解されてビンタ。
実によろしい……。
他にもいろいろと考えられるが、どれも実によろしすぎる。
http://www.sadakane-ss.net/kinkyo/log27.html
 ページ最下部、2008/07/17付の日記。
 素晴らしいですね。
 とりあえず広義の「誤解ビンタ」の作例には心当たりがあるので、次回あたりの更新で紹介したいと思います。

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作品データ

TVアニメ『ペルソナ4』(2011年)
http://www.p4a.jp/
第5話『Would you love me ?』
監督: 岸誠二
脚本: 柿原優子
絵コンテ: 政本伸一
演出: 政本伸一
作画監督: 小馳那乃國 広道、可児里未

概要

 主人公・鳴上悠は、ペルソナ仲間である里中千枝の頼みで弱小バスケ部に助っ人として仮入部し、やる気のないマネージャー海老原あいに接近。あいの意中のバスケ部主将・一条の好みを探るが、なんと一条は千枝が好き。失意のあいを慰めるうちにつきあうことに。
 一方、悪友の花村は、千枝が悠のことを好きと勘違い(?)して三角関係をけしかける。あいにとっては恋敵である千枝の乱入で、ある意味花村の思惑通りに険悪になった二人は、なんとバスケ部の練習試合の最中に修羅場を演じるのだった。
 交互に3発ずつ、計6回のビンタの末、取っ組み合いに発展する。

評価

衝撃度 (Impact): 70

 最初から険悪だった二人だが、まさかバスケ部の試合中にコートサイドで破局が訪れるとは。
 とはいえ試合は滞りなく進行し、悠、花村以外の部員は総スルー。

表現力 (Expression): 90

 最初のビンタは打たれる千枝のアップを正面から。千枝の反撃は向かい合って立つ二人の全身を横から捉える。その直後、今度はお互いの肩越しの視点を交互に切り返すカットワークで見せる。
 また、最初のビンタをきっかけに挿入歌が流れ、曲の疾走感がテンポのいいビンタの応酬とシンクロし、さらに曲の展開がバスケの試合のクライマックスとも一致する演出は見事。

感情度 (Emotion): 75

 千枝は悠のことを好きなのかと思ったあいは初めて優位に立つポイントを得たと考え「なぁに、あんたアイツのことが好きなの?」と挑発するが「友達だよ!」と真っ直ぐ返され、「愛されてるうえに友達までいて贅沢だ」という文脈でキレる。
 確かに、恋敵に対して挑発も効果がなく、眼中になしという切り返され方をしてイラッときたのかもしれないが、純粋な愛憎劇ではないので評価はやや抑えめ。

リアクション (Reaction): 85

 突然のビンタに「何の話!?」と反応しながらも、あくまで自分の主張「鳴上を振り回すな」をブレずに繰り返し、しかも即ビンタを打ち返す千枝。お互いの主張は噛み合っていないが、沸点の低さは高評価。

破局度 (Catastrophe): 50

 試合後の食事会には同席しているし、やるだけやってカラッと収まったのか、相変わらず険悪ではあるものの関係は落ち着いたようである。そこは女性同士ならではなのか。

作品データ

秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏 その1』(電撃文庫)

 六限目が終わり、掃除が終わり、
「晶穂、部長が記事の割り付けやるって言ってたから今日は」
 そこでいきなり、晶穂は振り向きざまに斜め上から叩き下ろすような、浅羽がたたらを踏むくらいのびんたを見舞った。
 あっぱれな紅葉が焼きついた浅羽のほっぺに視線を突き刺し、突き刺したその視線を最後まで横目で残しながら踵を返して、晶穂は足早に教室を出ていった。
 ほっぺたを押さえて呆然とする浅羽の両肩に背後からぽんと手が乗って、
「かっこいいですなー浅羽くん」
 花村がそう言い、
「いやあ、おれ男が女に殴られるとこナマで見たの生まれて初めてだわ」
 西久保がそう言った。浅羽はようやく我に返り、空の彼方を見るような視線を、晶穂が出ていった教室の扉に向けた。
「西久保――」
 今日は、部室に顔を出すのはやめにしようと思う。
「――ラーメンおごってくれ」
 西久保は、重々しくうなずいた。

概要

 須藤晶穂は、主人公・浅羽直之のクラスメート。彼のことが気になっていて同じ新聞部にも押しかけるようにして所属している。突然転校してきたヒロインの伊里野加奈(イリヤ)は、その浅羽とワケありらしい、晶穂にとっては強力なライバルです。
 問題のシーンは、避難訓練で防空シェルターにイリヤと二人きりで閉じ込められた浅羽が、彼女を押し倒しているのを目撃されたという噂が全校に広がった、その日の放課後のこと。
 浅羽がイリヤを押し倒したというのはもちろん誤解であり、晶穂にもそのことは理屈ではわかっているはずだが、そう割り切れるものではない、という状況。

評価

衝撃度 (Impact): 80

 放課直後の教室という、弛緩しきった空気の中で突然起こる悲劇。
 問題の、防空シェルターでの一件から顔を合わせていない二人のファーストコンタクトがこれです。当然クラスメートにバッチリ目撃されているのもポイント高い。

表現力 (Expression): 75

 行為そのものはあっさりと一文で書かれているが、前後の状況も含めスキャンダラスな出来事を描いて余すところがない。
 “びんた”と平仮名で書かれているのもこの場合は効果的。

感情度 (Emotion): 95

 誤解だろうとわかっていても、浅羽とイリヤが全校の噂になっていることに心中穏やかではないであろう晶穂。しかも、ただでさえ「女子を押し倒したと学校中の噂になっている男」など女子にとってエンガチョ級のタブーというべき存在であるのに、その浅羽が何の屈託もなく声をかけてくるという無神経さ。
 そういった感情の表出として、また、いかがわしい行為に及んだ(とされる)男に対して「不潔!」という糾弾としてもビンタが機能している。

リアクション (Reaction): 90

 防空シェルターの一件で時の人となった浅羽だが、全く空気を読めず自然体で晶穂に話しかける。物も言わずビンタされるとは全く、夢にも思っていない、理想的なビンタシチュエーションである。
 「ほっぺたを押さえて呆然とする」くだりはセオリー通りだが、さらにバッチリ目撃した悪友にいじられ、あまりの不条理に「空の彼方を見るような」遠い目をして、「――ラーメンおごってくれ」という中学生とは思えぬ哀愁漂うやりとり。男の友情である。素晴らしい。

破局度 (Catastrophe): 40

 残念ながらこの後二人の和解(?)は描かれず、次の章では視点が変わってはいますが、この事件そのものはほとんど後を引かなかったようで、二人の関係は元通りに戻っている。